「女性起業家ネットワークDAY」を開催しました~前編~

11月20日(火)太田市産業支援センターにて、「女性起業家ネットワークDAY」を開催しました。

群馬県内の女性起業家が集まって、勉強会や交流会を通してビジネスパートナーや仲間に出会うきっかけづくりを目的としたもので、太田市女性活躍推進事業の一環です。

午前の部は県外から講師をお招きしての基調講演、お昼はランチ交流会、午後の部はおおたなでしこ未来塾OGによる選べる勉強会と、盛りだくさんの「女性起業家ネットワークDAY」。

前編・後編に分けてレポートします!


世界初!野菜を原料にした『おやさいクレヨン』

午前の部・基調講演の講師は、青森県にあるmizuiro株式会社 代表取締役の木村尚子さんです。

「『親子』の時間をデザインしたい」をモットーに掲げたmizuiro株式会社のオリジナルプロダクト『おやさいクレヨン』は、青森県産野菜の廃材を色味の原料とし、米油からつくられたワックスで固めた世界初の植物性クレヨン。

食品になるものでつくられているため、万が一小さなお子さんが口に入れてしまっても安心です。

初期製造ロット2,000箱から始まり、なんと3年間の累計出荷数約10万セットという大ヒット商品。首都圏を中心とする量販店やネットで販売されているのみならず、中国・韓国・アメリカ・リトアニア共和国など世界進出も果たしています。

とんとん拍子に成功を収めてきたかに見える木村さんですが、ここまで来るには並々ならぬ苦労と努力があったそう。

「『おやさいクレヨン』開発ストーリー~自宅アパート、机一つから始まった起業~」と題し、その誕生秘話をお話してくださいました。


崖っぷちの状況がパワーを発揮する源に

 幼少のころから絵を描くことが好きだったという木村さん。高校を卒業後、弘前市の専門学校を出て青森市内の広告制作会社に入社し、グラフィックデザイナーとして活躍します。

在職中に現在中学3年生の娘さんを授かり、仕事を続けたかった木村さんは、産前産後3カ月間の産休のみで職場復帰。デザイナーとして忙しい日々を送ります。

 数年が経ちシングルマザーとなっていた木村さんは娘さんと二人三脚の生活をしていましたが、だんだんと「この生活で本当にいいのか?」と疑問を抱くようになりました。

「青森は冬になると雪が深くてとても寒いんです。そんななか、まだ小学生の娘がひとりで帰ってきて、わたしが帰るまでストーブに当たって待っている。仕事は生活のためにしているけれど、はたしてその生活が娘にとってもわたしにとってもよいものなのか?と考え始めました」

当時のワークライフバランスへの疑問や会社に勤めていることの意味など、検討を重ねた結果、木村さんはフリーデザイナーに転向することを決意します。

「シングルマザーであること、会社という組織に身を置く必要性を感じなくなったこと…さまざまな要因に追い詰められて、いわば『崖っぷち』だからこそのフリーランスという選択でした」



『おやさいクレヨン』開発期間はたったの9カ月!


 フリーデザイナーとして営業活動や制作受託を始めて約1年。だんだんとワークライフバランスが整い、心に余裕が生まれたころ「自分だけのオリジナルプロダクトをデザインしたい」という想いが強くなりました。

ちょうどそのころ、青森市内の廃校になった小学校で藍染展がひらかれます。天然素材がつむぎ出す色の世界観に感動した木村さんは、藍をつかった青森発のインクを開発したいと考えるように。

「パソコン上だと、色の表現は数字で管理するんです。それに慣れてしまっていたころ、天然の色でこんなに多くの濃淡・美しさが表現できることに衝撃を受け、わたしもこの『水色』で何かをつくりたいと思いました」

その後、ホウレン草をゆでるとお湯がきれいな緑色に染まるところに着眼し、色のバリエーションとして野菜を使うことを発想します。

とはいえフリーデザイナーの木村さんには仲間もおらず開発資金もなく、まして文房具の開発経験や知識などはまったくありません。

そこで活用したのが行政の支援。5月に無事補助金が採択され、開発期間2013年7月~2014年3月末までのなんとたったの9カ月間で開発が始まりました。

期間の都合からインク開発は難しいと判断した木村さんが思い浮かべたのは、かつてあこがれたドイツ製のミツロウクレヨン。安心安全なクレヨンで、親子で一緒にお絵描きを楽しんでほしいという思いから、青森県産野菜を利用したクレヨンの開発に取り組み始めました。

「事務所で野菜をすりこ木でパウダーにしてロウに混ぜて、製氷皿で手づくりするところから始まりました。この9カ月間は寝る間もないほど忙しいし、クレヨンをつくったところで売れるかもわからないし、社員の雇用の責任もあるし……プレッシャーに押しつぶされそうになったこともあります。でも、娘が試作のクレヨンで絵を描いているのを見て、『もうちょっとがんばろう』と何度も思い直しながらの9カ月でした」



ブランディングで「弱み」を「強み」に


開発期間中に名古屋市の老舗クレヨン工場との出会いがあり、野菜の「残さ」と呼ばれる不要な部分を利用するアイデアも浮上。もちろん文具市場の調査やターゲット分析、ブランディングも徹底的に追及し、パッケージにもこだわりました。

こうして出来上がった『おやさいクレヨン』。手に取ると、ほんのりと使用している野菜の香りがします。畑で撮影していた際に「きゃべつ」のクレヨンを青虫が食べていたこともあったのだとか!

実際に使わせていただくと、淡い色合いにあたたかみがあり、野菜の名前そのままの「ゆきにんじん」「りんご」といったネーミングもなんともかわいらしくて、ギフトにぴったり。初めて出展したギフトと生活雑貨の見本市で、1,000人を超えるバイヤーが殺到したのも納得です。

「『おやさいクレヨン』は、天然の原料を使っているため色味は安定しないし、原価が高いため販売価格は2,000円とクレヨンにしては高価です。弱みと強みは表裏一体。ターゲットを明確にし、『こだわり感』のあるブランディングをすることで、『弱み』に見える点を『強み』に変えることができました」

説得力のある木村さんの言葉に、聴講していた女性起業家のみなさんは強くうなずいていました。



『おやさいクレヨン』のこれから


季節によって色を変えたりパッケージをリニューアルしたりと話題づくりをしつつ、「100人のおやさいクレヨン画プロジェクト」開催や青森県内の保育園・幼稚園に寄贈するなど、普及活動にも力を入れています。今後はシリーズ化して、『おやさいクレヨン』の仲間を増やしていくと同時に、日本国内だけでなく海外へも積極的に展開していきたいと木村さんは言います。

「わたしは今まで青森以外で暮らしたことがないんです。海外の方からすれば日本といえば東京でしょうけど、東京だけじゃない、地方にもいいものがたくさんある!ということを世界に発信していきたい」

ふんわりとした優しい、『おやさいクレヨン』の雰囲気そのままの木村さんですが、これまでの努力や葛藤、プロダクトにかける想いなどが、その穏やかな言葉の端々に垣間見えました。

木村さんの「崖っぷち」という状況、社員や家族に対する責任感、育ててくれた地元を活性化したいという想い……そういったものが「熱意」となり、周囲の人の心を動かしていったのだと、強く感じた講演でした。




ライター:ento(株)銀鏡あゆみ

OTA-WOMEN~太田市女性活躍推進事業2018~

太田市で実施している女性活躍推進事業について、2018年度の事業をまとめて発信していきます!